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目を開けると、
真っ白な濃い霧の中から出てきたのは、大きな紅い門。
神社の鳥居みたいな。門の両側には形相の恐ろしい赤と青の鬼。
じろり、と妖怪を睨んでいる、が妖怪は全く気にも留めない。
大きな門を潜ると、一本の大通りが続いている。左右横に逸れれば小道が幾つもある。
西洋建築と東洋建築が文字通りごちゃまぜになった風景。
明治時代の、日本人が独自に真似た西洋建築とはちがう。
『踏襲した』では温い。
もっと、各それぞれが、ぐちゃぐちゃに混ざった、現実離れした、吐き気すら催す、そんな景色だ。
これが現実だとは思いたくない。背筋がぞわっとした。
ガス灯には、夏祭りの櫓みたいに提灯が幾つもぶら下がっている。
三味線、太鼓、琴らしき音が生活音状態で鳴っている。
未知の空気。湿気、少し焦げ臭い、古臭いにおいがする。かび臭いようにも感じる匂い。
からーん、ころーん・・・。
軽い、乾いた、軽やかな音じゃなくて、変に無機質で、でも、意思を持ってるような高い、転がる音。
「豪勢だなぁ~」
呑気な声が降って来る。
煙管をくゆらせながら、妖怪がにやつく視線を送る。
花魁道中だ。ほんもの、と言っていいかは不明だが、実際生で見たのは初めてだ。
周りは異形の者で埋め尽くされ、物見遊山で花魁に熱っぽい視線を送っている。
建物と同じで東洋と西洋がごちゃまぜだ。
「あの女も、時間がくりゃ、こーなるぜ」
「!」
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