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(そんな、あいつが、こんな風に、これと全く同じになるっていうのか?!)
キレイ、ではあるけれど、そんな・・・。言葉が出てこない。
千加の末路を見せつけられて、司は喉がカラカラになっていた。
頭も固く動かなくなって、瞬きすら忘れている状態に陥った。
「オマエがぐずぐずしてるとな」
妖怪の言葉は、一応は生理的に耳へと流れ込むが、頭が付いて行かない。
その場に立ち尽くしていると、トナリに居た煙管の匂いが離れていく。
横を見れば、妖怪の姿がない。左右を見回す。
振り向けば、ズズっと背の高い着流しの後ろ姿が、横道を悠々と歩いている。
あの妖怪を信用していいものか、わからないが、ここで知り合いはアレしかいない。
震える膝を動かして後をついて行った。
固い地面の筈なのに、ぐにゃぐにゃしたものの上を歩いている感覚だった。
木の柱と土壁が続く細い道。人がすれ違う余裕はあるが、挟み撃ちにされたら逃げられないだろう。
両側を建物に挟まれているのに、やけに明るい。
見上げれば、2階の手すりから、大通りと同じく提燈が幾つも下げられている。
全部同じに見えてしまう。入り組んだ道ではないのに、碁盤の目とまでは行かなくても、
曲がりくねった道はない。目印となりそうな物も、ない。
薄暗い。夏に似ているのに、冬の冷気をを零したかの中を、煌々と提燈の灯りが照らしている。
「よぉっく覚えておけよ、頭でっかちなんだからよ」
司の内心と読んだかのように妖怪が忠告する。
無言の司を嘲笑うかの様に、妖怪は飄々と続けた。
「あの女を連れ戻せる期限は一昨日から明後日。つまりは、今日含めて3日間。毎日真夜中零時に鐘が鳴る。最後の鐘が鳴りゃ、その日の終わり。次ぐ日になる」
シンデレラの魔法が解けるタイムリミットが毎日ある感じだ。
「実質二日じゃないか・・・。その間にどうやって」
「オマエ、あの女とはガキの頃からの付き合いだよな?」
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