第3章 8月14日ー邂逅3ー

3/8
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/73ページ
(そんな、あいつが、こんな風に、これと全く同じになるっていうのか?!) キレイ、ではあるけれど、そんな・・・。言葉が出てこない。 千加の末路を見せつけられて、司は喉がカラカラになっていた。 頭も固く動かなくなって、瞬きすら忘れている状態に陥った。 「オマエがぐずぐずしてるとな」 妖怪の言葉は、一応は生理的に耳へと流れ込むが、頭が付いて行かない。 その場に立ち尽くしていると、トナリに居た煙管の匂いが離れていく。 横を見れば、妖怪の姿がない。左右を見回す。 振り向けば、ズズっと背の高い着流しの後ろ姿が、横道を悠々と歩いている。 あの妖怪を信用していいものか、わからないが、ここで知り合いはアレしかいない。 震える膝を動かして後をついて行った。 固い地面の筈なのに、ぐにゃぐにゃしたものの上を歩いている感覚だった。 木の柱と土壁が続く細い道。人がすれ違う余裕はあるが、挟み撃ちにされたら逃げられないだろう。 両側を建物に挟まれているのに、やけに明るい。 見上げれば、2階の手すりから、大通りと同じく提燈が幾つも下げられている。 全部同じに見えてしまう。入り組んだ道ではないのに、碁盤の目とまでは行かなくても、 曲がりくねった道はない。目印となりそうな物も、ない。 薄暗い。夏に似ているのに、冬の冷気をを零したかの中を、煌々と提燈の灯りが照らしている。 「よぉっく覚えておけよ、頭でっかちなんだからよ」 司の内心と読んだかのように妖怪が忠告する。 無言の司を嘲笑うかの様に、妖怪は飄々と続けた。 「あの女を連れ戻せる期限は一昨日から明後日。つまりは、今日含めて3日間。毎日真夜中零時に鐘が鳴る。最後の鐘が鳴りゃ、その日の終わり。次ぐ日になる」 シンデレラの魔法が解けるタイムリミットが毎日ある感じだ。 「実質二日じゃないか・・・。その間にどうやって」 「オマエ、あの女とはガキの頃からの付き合いだよな?」
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!