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「?・・・ああ」
この妖怪、初めて会う筈なのに何故か自分に詳しい?
「いちばん強い感情を呼び起こせば、帰りへの切符を手に入れられるぜ」
銀煙管を歯で咥えながら、妖怪は意味深に笑う。
「アンタ、いったい何なんだよ?」
「見たまんまだよぅ」
「・・・もっと子供の頃、よく人間じゃ無いものと遊んだ記憶がある。アレもイッテンシカイの仕業なのか?」
「そりゃあ、単にオマエと遊びたかっただけだろうなァ。その様子じゃ、手を切ったみ
てぇだな~。賢明な判断だぜ、無防備なガキがどうこう出来る程、ココの連中は容易かねぇ」
どのくらい歩いただろうか?
聞きたい情報も玉切れで、貝みたいに押し黙ったままの司と銀煙管を吹かしている。
そもそも、これって現実なのか?
神社から、タイムスリップしたような、こんな変な場所に居るなんて、非現実的過ぎる。
長い事、自分からは関りを持たない様にしていた世界。勘が鈍るのと似た感覚が支配して行く。
「あ。オレはちーっとばかしヤボ用があってな~」
と、呟いたかと思った瞬間、妖怪は姿を消した。
四方八方を見回しても、異形の者が行き交うだけだ。
正面を見ると、朱色の千本格子が特徴的な、瓦屋根の豪奢な建物の前だった。
(・・・・・・正面から入っていいのか?)
客じゃないのに?
巨大な蓮が描かれた臙脂色の暖簾の隙間から、中を覗く。
広い間口の小上がり。外観とは打って変わって、黒い木で造られている。時代劇に出てきそう感じだ。
すると、店の中からガタイの良すぎるオニが大勢、文字通り鬼の形相で暖簾を割って飛び出してきた。
「オラ?あの野郎ドコ行ったぁああああ?」
ずどどどどどっと闘牛の群れみたいに、司たちの横を走って言った・・・。
「オヤ、まぁ若い男の子さんやねぇ~」
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