第3章 8月14日ー邂逅3ー

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「?・・・ああ」 この妖怪、初めて会う筈なのに何故か自分に詳しい? 「いちばん強い感情を呼び起こせば、帰りへの切符を手に入れられるぜ」 銀煙管を歯で咥えながら、妖怪は意味深に笑う。 「アンタ、いったい何なんだよ?」 「見たまんまだよぅ」 「・・・もっと子供の頃、よく人間じゃ無いものと遊んだ記憶がある。アレもイッテンシカイの仕業なのか?」 「そりゃあ、単にオマエと遊びたかっただけだろうなァ。その様子じゃ、手を切ったみ てぇだな~。賢明な判断だぜ、無防備なガキがどうこう出来る程、ココの連中は容易かねぇ」 どのくらい歩いただろうか? 聞きたい情報も玉切れで、貝みたいに押し黙ったままの司と銀煙管を吹かしている。 そもそも、これって現実なのか? 神社から、タイムスリップしたような、こんな変な場所に居るなんて、非現実的過ぎる。 長い事、自分からは関りを持たない様にしていた世界。勘が鈍るのと似た感覚が支配して行く。 「あ。オレはちーっとばかしヤボ用があってな~」 と、呟いたかと思った瞬間、妖怪は姿を消した。 四方八方を見回しても、異形の者が行き交うだけだ。 正面を見ると、朱色の千本格子が特徴的な、瓦屋根の豪奢な建物の前だった。 (・・・・・・正面から入っていいのか?) 客じゃないのに? 巨大な蓮が描かれた臙脂色の暖簾の隙間から、中を覗く。 広い間口の小上がり。外観とは打って変わって、黒い木で造られている。時代劇に出てきそう感じだ。 すると、店の中からガタイの良すぎるオニが大勢、文字通り鬼の形相で暖簾を割って飛び出してきた。 「オラ?あの野郎ドコ行ったぁああああ?」 ずどどどどどっと闘牛の群れみたいに、司たちの横を走って言った・・・。 「オヤ、まぁ若い男の子さんやねぇ~」
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