第4章・8月15日

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行きついた先では、既に食事が始まっていた。 昔話に出て来そうな床の上で、漬物に穀物、汁物を、鬼や人間の姿をとっている異形の者がかっ込んでいた。 目を白黒させる司に、ひとりの飯炊き女が声を掛ける。 「ソコの新入り、とっとと食わないと、無くなるよ!!」 「あっ、はい!!」 食事の乗ったお盆を受け取り、イモ洗い状態の部屋の中、入り口付近の角に腰を下ろした。 空腹ではあったが、食べられる心境では無かった。 古米なのか、黒ずんでいて、味噌汁も具を探すのに苦労するくらいだ。 インスタント味噌汁の方が圧倒的に具沢山だ。 二切れの沢庵が申し訳程度に小皿に乗っかっている。 でも、身体に食物を入れなければ、何も出来ない。 もう、今日を含めて二日。食事で手間取ってる暇なんてない。 味噌汁に黒ずんだ穀物と沢庵を入れて、茶漬けの要領で、丸飲みにした。 沢庵は多少噛んだが、以前千加が作ったぬか漬けの方が美味しかった。 彼女が、おばあちゃん子だった事に感謝すべきだろう。 ここへ来て何をすべきかを再認識する切欠を与えてくれたのだから。
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