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「オラ!!新入り!!ナニちんたらやってんだぁー!!もう店開きだろぉがッ!!」
サッカーボールを蹴飛ばすみたいに、背後から蹴られ、雑巾を掛けていた力も働いて、気付いた時には池で巨大魚が頭上に居た。
腹を減らした巨大魚たちがクジラみたいに襲い掛かって来る。
石の縁に掴まろうと手をバタつかせるが、複数の巨大魚が間を往来する。
池とは思えない激しい波にカラダが揺さぶられる。
(足が付かない?!!)
爪先に触れすらしない、水底は永遠と深く続いているようだった。
(何もしないまま、魚の餌になるっていうのかよっ・・・)
元の世界でも、視える自分は何も出来ず、どちらかと言えば自分が近い筈の世界ではもっと非力で、現に魚の餌になろうとしている。
水が目や鼻や口に入り込む。魚臭い匂いが口腔内に充満する。
ブラックアウトしかけた瞬間、上昇気流に押し上げられるように、司の体は池から放り出され、砂利の上に落っことされていた。
「クソガキがぁ~、入店初日でお陀仏かぁ?」
咳き込みながら、見上げると着流しの煙管妖怪が仁王立ちしていた。
砂利の上には巨大魚が大量網にかかった状態でビチビチ跳ねていた。
「ダンナぁ~、たんまりツケが溜まっとるんに。ようカオが出せたなぁ」
呑気に煙管を吹かす妖怪の背後に、用心棒の鬼たちが迫る。
「その分コイツがカラダで返すだろうが」
振り向きもせず、妖怪はくいくいと煙管で司を指し示す。
(やっぱり、それで置いて行ったのかよ)
「オラ!こんガキ、ひょろひょろして雑巾掛けすら、まともに出来ねぇじゃねぇか!!池にまで落ちやがってよぉ」
「・・・後ろから蹴ったのは、そっちだろ!!」
雑巾掛け自体に文句は言われても、池に落ちたのは蹴飛ばされたからだ。
「オラ!!新入りの癖にナマほざくんじゃねぇ!!」
激高した鬼が、司の胸ぐらを掴んだ。
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