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ごつごつした大木みたいな腕には剛毛だらけで、両手で掴むと針金が生えているようだった。
異様なまでの体格差と剛力で、司は砂利から足の裏が完全に浮いてしまっていた。
「オラ、憂さ晴らしにもならねぇが、鳴かない丸太を殴るよりかはマシよ!!」
待ち構えていたもう一本の腕が巨大な拳をこしらえている。
岩の塊みたいなのに殴られたら、即死だ。
恐怖を抑え込もうと司は目を瞑った。
「やめておくんなんし!!」
聞き飽きた声が、別の口調で耳に飛び込んできた。
「花魁!!」
「そのコは昨日来たばっかで、何も知らんのでありんす」
昨日と同じ花魁姿の千加が走りづらそうに、廊下を移動しすぐ横に駆け寄って来た。
「それとも、おにぃさん方は用心棒の癖に、まだこんなちいさい子ぉを、いたぶる程肝っ玉が小さいんでありんすか?」
「オラ、花魁贔屓かよ!!」
鬼はパッと司の胸ぐらから手を離すと、どすどすと砂利を踏みつけながら、廊下へと去って行った。
鬼の顔ぐらいの高さまで持ち上げられていた為、落下した瞬間、砂利が飛び散った。
「だいじょうぶ?ツカサちゃん」
屈みながら、白粉の香りをさせた幼馴染が覗き込んでくる。
紅を差した目尻は子犬みたいに下がっていた。
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