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懐紙に乗せたカラフルな金平糖。
変なところで、以前と同じ事が重なって、惑わされてしまう。
「ありがとうございます」
転がさない様、恐る恐る懐紙を受け取ると、花魁の袖口から、緑色の数珠みたいな物が見え隠れした。
「あの、それっ・・・」
「あぁ、キレイでしょ?コレ、ちいさい頃から持っとるんどす~」
左腕の袖口を下げると、緑色の目玉みたいな柄の石のブレスレットが現れた。
「イイヒトからの贈り物どす」
大事そうに撫でる。
(自分で作ったヤツだけどな・・・)
「じゃあ、わっちはもう行くでありんす。ツカサちゃん、いつでも遊びに来ておくんなし。約束」
花魁は千加の顔で微笑しながら、小指を出してきた。司も小指を出した。
絡み合った一番小さな指同士は、約束を結ぶ。
「指切った!」
無邪気に笑う表情は、同じなのに、なんで、覚えてないんだよ。
花魁は優雅に歩いて、奥の座敷へと消えた。
「妖怪」
「ん~?」
「記憶は無いのに、なんでこんなにアイツは、この世界に馴染んでるんだ?」
「そう言いくるめられるからなぁ~。ちょっとばっかし考えてみろ、すべてがゼロの状態で、何の考えの基準もない状態で、判断できるか?」
想像もつかない。
今、自分もこの世界については、何も知らないし、分からない。
でも、『異常』だと感じるのは、それまで自分が居た世界の記憶や知識があるからだ。
夜が明けない、なんて、ふつうはあり得ない。
でも、そう思う事こそが、考えの基準があるという事だ。
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