第4章・8月15日

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懐紙に乗せたカラフルな金平糖。 変なところで、以前と同じ事が重なって、惑わされてしまう。 「ありがとうございます」 転がさない様、恐る恐る懐紙を受け取ると、花魁の袖口から、緑色の数珠みたいな物が見え隠れした。 「あの、それっ・・・」 「あぁ、キレイでしょ?コレ、ちいさい頃から持っとるんどす~」 左腕の袖口を下げると、緑色の目玉みたいな柄の石のブレスレットが現れた。 「イイヒトからの贈り物どす」 大事そうに撫でる。 (自分で作ったヤツだけどな・・・) 「じゃあ、わっちはもう行くでありんす。ツカサちゃん、いつでも遊びに来ておくんなし。約束」 花魁は千加の顔で微笑しながら、小指を出してきた。司も小指を出した。 絡み合った一番小さな指同士は、約束を結ぶ。 「指切った!」 無邪気に笑う表情は、同じなのに、なんで、覚えてないんだよ。 花魁は優雅に歩いて、奥の座敷へと消えた。 「妖怪」 「ん~?」 「記憶は無いのに、なんでこんなにアイツは、この世界に馴染んでるんだ?」 「そう言いくるめられるからなぁ~。ちょっとばっかし考えてみろ、すべてがゼロの状態で、何の考えの基準もない状態で、判断できるか?」 想像もつかない。 今、自分もこの世界については、何も知らないし、分からない。 でも、『異常』だと感じるのは、それまで自分が居た世界の記憶や知識があるからだ。 夜が明けない、なんて、ふつうはあり得ない。 でも、そう思う事こそが、考えの基準があるという事だ。
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