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「で~?オマエ、どうすんだよ?空の色がずーっと同じだと、時間が経ってないみたいに感じるけどな。もう巳の刻だぜぇ~」
「巳の刻って何時だよ?」
「午前10時ってトコだなぁ」
嘲笑うかの様に火皿から煙が揺らぐ。
「10時?!!」
「クソガキが鼻の下伸ばしてる場合じゃねぇぞ~」
妖怪は、またニヤニヤしながら、こちらを見下ろしている。
実質一日しかない。
(『一番強い感情』なんて、いったい何を思い出させればいいんだよ)
それが、何か分かっていたとしても、思い出させる切欠なんて、わかる筈も無い。
こうしている間も、一秒ごとに時間は進んでいく。
空の色は同じままで、時間の感覚なんて、とっくに狂っているけれと、それでも、確実に時間は消え去って行っている。
手探りで、千加にとって最も強い感情を呼び起こさせるしかない状況だ。
時間は限られているのに、こんな無理難題。
お盆の間にしか繋がらないって、不都合過ぎるだろう。
そこまで考えて、司はあるひとつの可能性に気付いた。
「イッテンシカイは盆入りから盆明けまでの間だけ、繋がるんだよな?」
「ああ、そうだぜぇ」
スーッとゆっくり煙を吸いながら妖怪は答えた。
「もしかして、来年も繋がるのか?」
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