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3日間だけでも毎年繋がるのなら、帰れるチャンスは常にある。
明日に間に合わなくても、一年後なら、打開策が幾つか揃えられると、そう思った。
すこし希望が浮かんだ瞬間。頭は砂利と草鞋に挟まれていた。
草鞋の底が砂利の海へと沈めにかかる。
「この大馬鹿が!!てめー、さっきの忘れたのか!!こんな小便臭い人間のガキが、ココでは赤ん坊同然だってのを。確かに、あの社とココは翌年もその翌年も繋がる。だがなァ、何の術も持たねーヤツが、一年も、この世界で今の意識を保っていられると思うな。弱い毒がじわじわと確実に効いてくんのとおなじだ。長く居れば居るほど、イッテンシカイに浸食されて、この世界の住人になっちまう。そうすりゃ、もう、人間としての記憶が薄れて『還る』なんて概念すらが消え失せるぜ」
湧いた希望は一瞬もせずに泡となった。
容赦なく司の頭を踏みつけながら、妖怪は続ける。
「それに、オマエ1年もの間、あの女を餓えた客から守り通せるとでも思ってんのか?」
司と違い、千加は記憶が無い。このセカイの事がふつうだと受け入れている。
折られてしまうのは、時間の問題だ。
踏みつけられた頭も、絶望が渦巻く頭の中も、頬に突き刺さる砂利も、何もかもが痛かった。
何としても、思い出させないと。
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