第4章・8月15日

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開店した遊郭は大賑わいで、怪しげな客が大勢押し寄せていた。 昨日は気付かなかったが、千加の他にも、沢山の遊女や、花魁がいるようだ。 司は、一番上等な客室に居た。 目の前には、 「ツカサちゃん、約束守ってくれて~、ホントイイコでありんすね~!!」 コロコロ笑う、花魁姿の幼馴染が居た。 「李さんは、いちばんの花魁なんですよね?だったら、なお一層、お部屋は綺麗にしておかないと。塵と埃は人が動く度に宙に舞って、目に見えなくても溜まって行きます。なので、常に花魁を美しく見せられるよう、じぶんを近くに置いてください」と、桃に土下座をしたのだ。 ・・・我ながら、よくそんな交渉が出来たと思う。 「お菓子、たぁ~んと召し上がれ」 脚付きの漆塗りの菓子器には干菓子が盛られている。 「いただきます」 さっきみたいに泣かれたらたまったもんじゃない。 学習を生かして、勧められるまま花の形をした固められた菓子を齧った。 見た目は堅そうでも、口に入れた瞬間、しゅうっと消えていく。 上品な甘さが後味が心地よい。 「花魁は・・・」 「李って呼んでおくんなんし」 「李さんは、遠い国のお話は好きですか?」 「聞いたことないお話は、聞きたいでありんす」 「きっと、初めて聞く話だと思います」 司は、自分が覚えている千加との思い出を、取り敢えず聞かせてみることにした。 あれは、千加の、死んだペットの猫の一件の後くらいにあった事。 母親からは、千加とは遊ぶな、としつこく言われたはいたが、視える事を隠さずにいられる千加と、千加の祖母には、自然と心を開いて行っていた。 放課後、校門を出ようとした時、また視えてしまった。 多分、子供の霊の類。 警戒心が備わっていない、小学生の司は、またうっかり話しかけてしまった。 「どうしたの?」 相手は何も答えない。司は座り込んで、もう一度話しかけようとした。 「あいつ、なんにもいないのに話しかけてるー!!」 「変なやつ~!!」 現実の声が、また心を突き刺していく。 ああ、いけない。ふつうは視えないだった、と。ガタガタ震えながら自己否定が始まる。 「オイー、なに、門に話しかけてるんだよー!!」
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