1人が本棚に入れています
本棚に追加
/73ページ
気が付けば、薬品の匂いが染みついた部屋のベッドの上だった。
ぐるりと囲った薄緑のカーテンが、機械的な微風に揺れている。
「司」
声に横を向けば、丸椅子に座る小松原千加が見下ろしていた。
黒髪の尻尾が頬の横から垂れている。
「軽い熱中症だってさ」
「あー・・・。悪い」
「いくら水分摂ったって、あんな暑い所じゃね」
千加は立ち上がり、薄緑のカーテンから出た。ぱたん、と鈍い開閉音が聞こえる。
後頭部と首に氷枕のひんやりした温度が心地いい。
額には濡れたタオルが乗せられている。同じ冷感でも、こんなに違うものか。
最初のコメントを投稿しよう!