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「ハイ、これ飲んで、もう少し寝てなさい」
スポーツドリンクのペットボトル2本を片手に、千加が戻って来た。
身体を起こし、キャップを開けたペットッボトルを受け取り、司は冷えたグレープフルーツ風味の甘い液体を口に入れた。続けて千加も自分の分のキャップを捻った。
「せんせいたちも、薄情だよね。休みがちな生徒を夏休みの間中拘束させるなんて」
「卒業ヤバイから。もう諦め。・・・留年の方が先か」
「成績いーのに、残念だよねぇ。司なら無理して夏休み中の専用補習受けなくたって、テストであんだけ点数稼いでりゃ、お目こぼしも通用すると思うよ?」
「1年の時の借金分があるから、どうかな?」
自分で自分への皮肉。
司は、去年から殆ど教室へは通っていない。
保健室にも通ってはいない。
幸い塾と家庭教師の両刀使いで、成績だけは落とさずに済んでいる。
倒れたのは熱中症もあっただろうけど、それだけじゃない。
(まだ、頭が重い)
ペットボトルを額に当てて、上体を屈める。
よりによって、3人しかいない教室に、なんで“出る”んだよ。
「・・・また、何か出たの?」
敢えて首を縦には振らなかった。
彼女は、泣きそうな苛立ってそうな複雑な表情をしていた。
「べつにイチイチ付き合わなくたっていーって・・・」
「あのね!アタシがいなかったら誰が倒れたアンタを保健室に連れて来るのよ!」
「ばあちゃん、まだ病院だろ?見舞い行かなくていいのかよー・・・」
ペットボトルを額に当てたまま、本が倒れるみたいにベッドに背中を預けた。
「ご心配なく。司ちゃんと仲良くしなって言付かってますから」
出来る事なら、はやくこの熱と氷冷の牢獄から脱走したい。
ほんと、ソンな体質になったものだ。
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