迎えり

6/51
前へ
/281ページ
次へ
『ごめんね』 大ばーちゃんが言った。 『全然』 『苦しまなかった?』 大学病院から緩和ケアのある病院に移って、2週間程…意識が無くなってから2日、日付けを跨ぐ頃、臨終となった。 『最期は、なんか…亡くなったかなぁ…みたいな感じであまり苦しまなかったよ』 おばあちゃんや母親が、まだ暖かい腕や足をさすっていた。 『口、開いたままなんだね?』 『うん、閉めないのかしら?』 『硬直しちゃうとね?』 依里の母親は、歯科衛生士であった。 『ねぇ、触ってもいい?』 依里が言った。 『怖くないの?』 『うん!』 依里は、大じーちゃんの口を閉じようと口元へ体を近付けた。 『最期にメンチカツと御手洗団子が食いたかったなぁ…元気に育てよ…』 『うん…』 依里は、この瞬間能力を身に付けた。
/281ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加