バイト先にて。

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バイト先にて。

まただ。 アイツと彼女が笑っている。 昼下がり、客もまばらなファミレスのティータイム。 いくら暇な時間帯とは言え、バイト中でしょ。 暇なら暇なりに、やることがあるはずなのに。 彼女は右手でアイツの腕に触って、楽しそうに笑っている。 アイツは鼻の下を伸ばしてニヤニヤしている。 それは私に見せつけてるつもり? ハイハイ。 言われなくてもわかってますよ。 私とアイツは、もう終わったの。 たとえアイツが、今までにないくらい好きだった相手でも。 アイツの『他に好きな子が出来た』の一言で終わった恋なんて、今更取り戻したいとは思わない。 いい根性してるじゃない。 同じバイト先で新しい彼女を作るなんて。 別れた女に、新しい彼女とのラブラブぶりを見せつけるなんて。 別れたら元のバイト仲間に戻れるとでも思ってるの? それとも、私を居心地の悪い気持ちにさせて、追い出すつもり? 私は何事もなかったように笑顔で接客をする。 子供じゃないんだから。 これくらいの事で、うろたえたり騒いだりしない。 終わった恋のひとつやふたつ、誰にだってあるはずだから。
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