第1章

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 私はある場所に家族旅行へ出かけた。もちろん、選んだのはペットOKのペンションで、セントバーナード、バーナーも一緒だ。最近は小さい犬種が人気みたいだけれど、私の家族は皆大型犬が好きで、バーナーはずっと前から家族の一員だ。  観光も一通り終わり、夕飯までの時間を持て余していると、ペンションのオーナーが近くにドッグランがあると教えてくれた。疲れてしまったという両親を置いて、私はさっそくバーナーをそこに連れて行くことにした。  柵の中は芝生が植えられていて、かなり広い。普段コンクリートの道を散歩しているバーナーは大はしゃぎだった。  私は走り回っているバーナーをスマートフォンで何枚か撮影した。そのうちに疲れてきてしまって、糞に気を付けながらドッグランの隅に座り込んだ。そのとき、近くにクローバーが一株生えているのを見つけた。そしてその中に四葉の物があるのを見つけ、私のテンションは一気に上がった。  さっそく撮ってSNSにでも上げようとスマホを構えたとき、画面が半分黒くなっているのに気づいた。裏返してみると、いつの間にかカメラのレンズに小さな羽虫がくっついている。舌打ちしながらそれを吹き飛ばしたときだった。  前足を肩にのせるようにして、バーナーが私にじゃれついてきた。走りまわっていたせいで、荒い息が後頭部にかかる。ご機嫌なのか不機嫌なのか、呼吸の合間に「う~う~」とうなり声が混じっている。よだれが頭のてっぺんに垂れた。 「わ、ちょっと!」  クローバーに夢中になっていた私は、不意を突かれて後ろに転がった。その拍子にシャッターボタンを押してしまったようで、ピロリとシャッター音が鳴った。  そのとき、狂ったように吠えながら、真横からバーナーが走り寄ってしてきた。 (あれ? じゃあさっきじゃれついてきたのはバーナーじゃない?)  慌てて振り返ってみたけれど、そこには芝と柵ののどかな風景が広がっているだけだ。頭を触ってみたけれど、特によだれで汚れているということもない。バーナーもいつの間にか吠えるのをやめていて、なぜか心配そうな顔でこっちを見ていた。 (そういえば……)  さっきシャッターを押してしまった事を思い出して、スマホを見てみる。カメラのレンズを調べていたから、ちょうど自撮り状態になったはずだ。
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