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生物の世は食べたり食べられたり。全ての存在は全ての胃袋を経由して繋がっておりまする。
ましてや一つの御山の中では、狭い世界はぐるぐる、ぐるぐる。食べては食べられ、連環して生き物は巡っておりまする。
まずはこいつをご紹介いたしましょう。どこにでもいて一番たくさんいるのに目には見えない小さな生き物、バクテリアでございまする。
有機物であれば何でも分解、死骸も枯れ葉もなんのその、目にこそ見えないがどこにでも存在して分解しては体内にエネルギーを取り込むタフな奴、そいつがこのバクテリア……
……を生きたままチュルリと食べたのはこいつ。乾燥して空を飛び水の中ではもがいて泳ぎ、踏み潰されても死にゃしないしぶとさ随一の小さな巨人、ミジンコ……
……をパクリと食べたのはこいつ。川の中には学校があると歌われる小さな心臓が外から見えるはかなき小魚、メダカ……
……をガブリと食べたヤゴをニョロリと食べたアマガエルを掴んで食べたザリガニを丸のみして食べたヘビをつついて食べたニワトリを捌いて食べた佐藤さんを焼いて食べた田中さんをガブリと食べたヒグマを潰して食べたゴジラの死体を分解して食べたバクテリア。
そう、生物は食べ物なり。そして食べ物たる生物はこのように循環しておりまする。
弱肉強食とは申しますが、強き者もいずれは滅び、いつしかバクテリアの餌食でありまする。ああ無情、ああ残酷。
さて、この小さな御山で起きた食物連鎖の話はここで終わりでございまする。ご清聴ありがとうございもうした。
え、何か変な言葉を聞いたとおっしゃりますか? ははは、いったい何のことやら。あっしにはとんとわかりませんぞ。
ですが、まあ……この御山に入られる場合には重々ご注意くだされよ。誰に食べられるかわかりません故に、ね。ほっほっほ。
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