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お気の毒な事だ。
これは、なんとしても電話の主の正体を確かめなければ!
足音を立てぬよう、階段室に近づく。
普段から閉ざされたままの重い防火扉を、物音を立てぬよう押し開けると……
通話の主は、仙道だった。やはりこの男だったか。
何を頼んでも嫌がらずにこなし、謂れのない失敗を責めてみても自分のミスだと背負い込み、私の誕生日には有志を募って祝いを持参する。完璧すぎて常々怪しいと思っているのだ。
先日、総務課に提出された、我が社の借り上げ寮への入寮願いの件も、私の一存でストップをかけている。寝食を共にさせるまで受け入れてしまって、もしもこの男が噂される様に“他社のスパイ”だとしたら……
私は、坊っちゃまと、その大事な従業員の皆様をお守りする為にここにいるのです!
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