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「ねえ、奥さんと別れるとか、馬鹿なことはしないでよ。」 「分かってるよ。」  何も分かってない。私は孝司のことを愛している。  体だけの関係。二人でそう決めた。奥さんのいる孝司をいつの間にか好きになってしまった。    海へと向かう高速道路。外の風が気持ちよかったので、エアコンをつけずに窓を開けていた。  カーブを切る度に、私の髪が孝司の肩に触れている。 「私たち、付き合ってるわけじゃないし、体の相性がいいってだけなんだから。」 「だから、分かってるって。」  孝司が少し声を荒げた。 「それならいいんだけど。」  私は、不満そうに答えた。  本当はこのまま、2人でどこかに行ってしまいたい。そんな気持ちを抑えて、演技する。  インターを降りて、海沿いの国道に合流した。もう少しで私のアパートに着く。  土曜日の夜を一緒に過ごし、日曜日の朝。孝司に送り届けてもらう途中だった。 「少し、砂浜を歩かない?」  少しわがままを言ってみる。 「少しならいいよ。」 「じゃあもう少ししたら、左に入って。」  ウィンカーをあげ、左に入り、孝司は、駐車場に車を停めた。午前7時。20台程停められるこの駐車場には、まだ他の車の姿は無かった。  2人とも朝に強い。朝6時には目が覚め、すぐ行動する。少ない共通点の1つだった。  車を降りると、潮風が2人を包み込んだ。いろんなものを、若しくはいろんなことを許してもらっているような気がして、私は好きだ。 「ほら、いこうよ、孝司。」 「おう。」  素っ気ない返事。本当は来たくないのが言葉に出ている。
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