真夜中の彷徨者

3/10
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
  長い河川沿いを車で走っていると、海はまだ   かと待ち遠しくなる。   あと2、3分すればシーサイドラインに出る   という所で、おかしな光景を目の当たりに   した。   時刻は、午前3時24分。   前方右側に舗装済みの小道と、暗い獣道と   いう、二本の道がある。   その分岐点には、街灯がぽつんと立っていた。   そして、   その街灯の下には、色黒で痩せこけた男と女   が立っている。“男と女”と言っても、老夫婦   といった感じで、服装も全身黒のコーディ   ネート。何よりも気になったのが、二人とも   首にスカーフのような物を巻き付けている   事だった。男の方は青、女の方は赤っぽい   色だ。服装からして、スカーフはどう見ても   違和感があった。   その光景を横目で見ながら通過しようと思っ   た時だった。   突然、私の車に気付いた二人が   “止まってくれっ!”   と言わんばかりに、こちらに向かって必死   に両手を振ってきたのである。   (こんな夜中に…何なんだ…あの人達は…?)   私は少し不気味に思ったが、何となく放って   おく事が出来ず、車を止めてしまった。   すると、その二人が私の元へ小走りで近づい   てきた。  「…神泊森林公園…という所は…どこですか…?」   二人がそう尋ねて来たのだ。  「え……っと、私…この近辺の者じゃないので…   ちょっと分からないですね…すみません…。   あのぉ…、その…神…泊? 森林公園ってとこ   に行きたいんですか?」   私がそう聞き返したのだが、二人は   私の “分からない” という返答にショック   を受けた様子で、無言のまま獣道の方へと   消えて行ったのであった。   私は、背筋のゾワゾワ感が止まらなかった。   しかし、   それどころではない。釣りだ。さっきまで   の妙な出来事を一瞬で忘れさせてくれる   釣りの魅力は計り知れない。     
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!