真夜中の彷徨者

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  『釣り』   というものは、自然相手の趣味とあって、   その日確実にターゲットの魚を釣り上げると   いうのはなかなか難しいものだ。   釣行開始から終了まで、魚が一匹も釣れな   い状態で結末を迎える事を   『ボウズ』   という。   この日私は、その『ボウズ』の状態でうなだ   れて家に帰ってきたのだった。   私が車から降りると、祖父が盆栽を眺めて   いた。   (…今は……釣り…だけど、俺も将来ああなる   のかなぁ……。盆栽…。 んっ…? 盆栽の緑…   森……森林公園……。そういやぁ、今日変な   事があったんだよな……。)   私は今朝の出来事を何気なく祖父に話して   みようと思った。   すると、  「…おぉ…、今じゃ…殆ど住宅地になっとるが…   10年位前…あの辺りは…緑が多くてのぉ…。   大規模な公園があったと思うんじゃが…それ   が神泊森林公園という所だったんじゃない   のかのぉ……。」   祖父は、少し首を傾げながら言っていた。   夕食を済ませた私は、シャワーを浴び、部屋   に戻った。時計を見ると、20時52分。   (明日も釣行に出かける事だし……、寝よっ!)   そして私は、ベッドの真ん中に大の字に   なった。3回ほど深呼吸をすると、自然と   目蓋が重くなり、私はいつの間にか眠って   いたのであった。   ふと目が覚め、辺りを見渡すが、暗い。   枕元にあった携帯電話の時計を見てみると、   2時47分。爆睡したにも関わらず不思議と   丁度いい時間帯に起きれるの何故なのだろう。   『釣り』   の魅力は計り知れない。   クロワッサンを頬張りながら車に乗り込む   と、昨日と同じルートで海へと向かった。
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