真夜中の彷徨者

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  (…今日こそはっ……!)   と、あれこれ策を考えながら車を走らせて   いると、いつしか例の街灯の所まで来ていた。   (あっ…、また…誰かいる……!?)   目を凝らして見てみると、またしても昨日の   二人組だった。   しかし、昨日とは明らかに様子がおかしい。   二人はより一層窶れ、足元も覚束ない感じ   だった。   するとまた、二人は私の車に向かって両手   を振り続けるのである。   (…またいるよ……っ!? 他県の人なのかな…   …? まさか……一日中この辺りをウロウロと   してたのか……? …んな訳ないよな…。)   気になった私は、また車を止めてしまった。   すると、   昨日会っているにも関わらず、二人は見知ら   ぬ素振りで言い寄って来た、  「…神泊…森林公園…と…いう…所を……教えて   下さい……。そこに…私達の…子供がいるん   です……。もう一度だけ………あの子に会い   たい……。」   その時私は、祖父の言っていた事を思い出   していた。   (あっ…!? そういえば…、じぃちゃんが   言ってたな……神泊森林公園ってトコは…   10年前に無くなってる…って。)   『親切』   なのか、どうかは分からないが、私は聞いた   事をそのままそっくり伝えようと思った。  「…あの、申し上げにくいのですが……その…神泊   森林公園…という所は………今はもう存在して   ないみたいです…。10年位前は…あったらし   いのですが……。」   私がそう説明すると、二人の顔が一気に青ざめ   た。そして二人は口を半開きにしたまま、   放心状態に陥ってしまった。  「…あっ、あの………大丈夫ですか………」   私の問い掛けにも全く応じない。  「どうして…どうして……… うぁぁぁっ…!!」   すると突然、男が叫び狂った。一方、女は   声を出す余力も残されていない様子だった。      
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