真夜中の彷徨者

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  そう考えると、私が会ったあの狸達は寿命   が近づいていたという事になる……。   彼らは悟っていたのかもしれない……   自分達はもう 『死』 が近いという事を…。      親が子を思う……。その感情は、人間も動物も   一緒なんだろうな…きっと…。   どうにか逃げ出して……死ぬ前にもう一度   だけ……生き別れた我が子に会いたかったの   だろう。   これぞ正に 『必死』 の思いで生き別れた   場所、 “神泊森林公園” を探していたんだ   ろう……。だか、一向に見つからず……   困り果てた狸達は、助けを求めるべく…   人間の姿に化けて……私の前に現れた……。   まぁ……こんなところだろう……。)   あくまでも仮説だ。これが真実とは限らな   いのだが、真剣に仮説を立てていく中で1つ   だけ腑に落ちない点があった。   神泊森林公園跡地は現在、住宅地となって   いる。狸達がその辺りで倒れていたのなら、   合点がいく。だか何故、 “あの街灯”    から住宅地とは真逆の場所で息耐えていた   のか。   私の中のモヤモヤは、まだ消えぬままだった。   それでも、   気付くと私は、また釣りに出かけていた。   呆れるほどの釣りバカである。   しかし、ここ最近の釣果といえば、まるっ   きり駄目。   やはり、   “邪念” のせいで、キャスティングの精度や   判断力が鈍っているのだろう。   (…ダメだ……っ。あの事がチラついて集中   出来ない……。)   私は早々に釣りを切り上げ、アングラー   モードから探偵モードに切り替えた。  
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