乙姫の陰謀

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乙姫の陰謀

「嫌です、私は、あの方とは結婚したくはありません。」  乙姫は、ハラハラとその透き通るような美しく白く輝く肌に大粒の涙を伝わせて、両親に訴えた。 「何を言うの?霊亀様と夫婦になれば、あなたも千年の美貌を保つことができるのですよ?」 両親は、乙姫を説き伏せた。 「たとえ千年、この姿を保つことができるとしても、嫌なものは嫌なのです。」 乙姫は、羽衣で涙をぬぐった。 「霊亀様は、今はあのようなお姿だが、龍族のお方じゃ。いずれは、雄々しい龍の姿におなりになるのだぞ?国津神の出雲にお前が嫁げば、我らも龍族との血縁が結ばれる。お家のためだぞ。」  父親は、お家のことしか考えてはいない。政略結婚とはいえ、乙姫は霊亀のおぞましい姿を思い浮かべると、一生あの化け物の側に居て、ましてや、子を儲けるなど、ぞっとした。亀の化け物が、龍の化け物になろうが、同じような物だ。しかしながら、何が何でも乙姫を霊亀に差し出そうと両親は躍起になっており、すでに乙姫の居場所はここには無い。     
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