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私達は生まれたときから一緒。いわゆる「幼馴染み」というやつ。
幼稚園も、小学校も、中学校も。入学式と卒業式の写真は二人一緒に写っている。もちろん、高校の入学式も。
そんな「友情」が「恋」に変わったのがいつなのかはもう覚えていないけど。「愛情」に変わったのは、私の十六歳の誕生日。
その時も海斗は同じ言葉を言ってくれた。
「俺、凪のことすっげえ好きだよ」と。
「凪……」
海斗の顔がゆっくりと近づいてきて、私の唇に彼の唇がそっと触れる。
少し熱い唇。体温の高い背中に腕を回した。
「……ごめんな」
私をきつく抱き締めて、震える声で呟かれる。
「好きになって、ごめん」
「海斗……」
私は知っている。
海斗がそうやって、いつも自分を責めていることを。
そんなこと、言われたくないのに。でも、そう言う海斗を止めることは出来なかった。
だって、一番辛いのは海斗だもん。
「大丈夫だよ。私は何があっても海斗の傍に居るから」
震えている頭をそっと撫でて、気持ちが落ち着くのを待つ。
しばらくの間、音楽室に響くのは時計の音と海斗の嗚咽のみ。
その肩越しに見えた。
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