空と海と君の声

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「見て、海斗ーー虹だ」 薄くなった雲から射し込む光に照らされて、海の上に虹がかかっている。思わず顔を向けたのであろう海斗も、それを見て顔を輝かせた。 「ホントだ。見ろよ、天使の梯子もある」 雲の僅かな隙間から帯状の光が、海上をまるでスポットライトのように照らしている。 空、光、虹、そして海。 「……綺麗だな」 「うん。ねえ、覚えてる? 海斗が私に告白してくれたのもあの辺りの海岸だったよね」 まだ五月で、誰もいなかった海辺。私のーー私達の特別な場所。 「私、あの日から海が大好きになったんだよ……また行きたいね」 赤く腫れた目を細めて、海斗も頷いてくれた。 「行きたいな、一緒に。で、俺は凪にプロポーズするんだ」 「それ、今言っちゃうかなぁ」 呆れて肩を竦めてみせれば「そっか」と照れくさそうに頭を掻いている。 「……でもさ、いつかは子供も連れて行くんだよね」 私達の。と笑う。十年後、きっとそうなっている。 「さてと、そろそろ行こうかな。雨も上がったし」 立ち上がる私に海斗は少し寂しそうにしていた。そんな顔をされると名残惜しいけど、傘を持ってきていなかったから今の内に行かなくては。 「そんな顔しないで。すぐ行くから、ね?」 「……分かった」 拗ねる姿はいつも以上に子供っぽい。 「じゃあな、凪。また明日」 「うんーーまた、あとでね」
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