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“休めるときは休んだらいいよ”
“応援してる”
“もし誰もいないと思っても、久志の味方がとりあえずここに一人はいるから”
“止まない雨はないらしいし、いつか久志が心から笑えるようになるのを祈ってるね”
自分のところに戻ってきそうな雰囲気を一度だって見せない男に。振られて一度として会うこともなかった元彼に。献身的なまでに、小春は言葉を送り続けた。
彼が返信をしなくても、彼女はその後に続けてなにかを送ることはなかった。
何ヶ月、長いと半年以上ものあいだ彼がSNSの更新をしなくても、彼女は自分からメッセージを送ることもなかった。
あくまでも、自分は振られた女であると自覚しながら、久志のためだけに言葉を送った彼女。そのSNSの投稿もメッセージも、彼はどうにも消すことはできなかった。押し出し一本なんて、おかしな話だ。彼女はただの一度も、想いに応えて欲しいなんてそぶりを見せなかったのだから。
ただ、彼女の想いに感化されただけ。いや。
普段なら、余分な投稿や不必要なメッセージの履歴はすぐに消す彼が、どうしても消せなかったものたち。
久志は、その一つ一つを部屋の片隅で眺めていた。
“勿体ないってどういうこと?”
彼女が海で尋ねた言葉がよぎる。彼は一人、フッと笑った。
「…勿体ないよな」
落ちて消えてしまうほどの声でそう漏らして。
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