新橋烏森口

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「お好み奉行か。まあ、課長代理よりは良いかな」 「ずっと良いですよ。お奉行様」  あつあつのお好み焼きと鉄板からの熱で、答える真理子の顔から汗が吹き出す。 「焼き方の上手い下手じゃ無いんですよ、お好み焼きは。人のためにお好み焼きを作るのが好きなんですよね。それも美味そうに食べる人に。こうして加藤さんを見ているだけで、こっちの方があったかくなれるからね」「下手に作って、不味そうに食べている連中は見てられないんだよね。だから普段は食べに行かないんだなあ。成敗したくなっちゃうから」  話しているわりには、どんどん自分も食べている。器用に鏝を使って口に放り込む。真理子も負けずに食べる。うん。やはり美味い。 「加藤さんも、役所で成敗したい奴いるでしょ。上木さんとか、土肥さんとか」  尊大な上木課長の顔が浮かぶ。成敗してやる。土肥、土肥、誰だっけ。あっ。やっぱり次官にも「さん」なんだ。ふふふ。成敗。成敗。 「ええ、まあ」 「でもね、そうも行かないんだよね。まあとりあえずは喜んで食べてもらえる人に、一所懸命おいしいお好み焼きを焼かせてもらうしか。それで社会が変わるとは言えないけれど、僕は幸せだから」     
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