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 僕が思い切って尋ねると、彼女はハミングで答えた。京都が舞台の古い歌謡曲。悲しい女の心を歌う。僕は、アクセルをぐいと踏み込む。エンジンが静かに答える。僕は彼女に合わせてハミングをする。徐々に大きくなり、二人とも歌いはじめる。大声で歌う。音は、開いた窓から飛び去っていく。  「新しい商売のアイディアはないか」  チビ六からそんなメールが入ったのは、八月に入った頃だった。不正コピーやパスワードの販売も順調にいっているが、長くやれば警察に目をつけられる。末端からは何段階も経ているので、そう簡単には挙げられないだろうが、用心にこした事はない。この世界は、最後までやっている奴が損をするものらしい。 僕は、電話会社が始めた「ナンバーディスプレイ」を利用した商売を提案した。架空の会社名義で電話を用意する。そして、若い女性相手の懸賞広告を出す。そうすると、勝手に向こうから電話番号を知らせてくれるという仕組みだ。今では、電話番号から住所を割り出すデータベースが開発されている。それを組み合わせれば、若い女性の住所・電話番号の名簿が出来上がる。集めるデータは、多重債務者でも、裏ビデオの顧客でも、何でもかまわない。もっとも、こんなもので商売になるものかどうか、僕には分からなかった。  数日後、チビ六から  「ありがとう」     
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