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 今週も金曜の夜に電話が鳴る。佐知子からだ。  「もしもし、佐知子です。今からいいかしら」  こちらも、準備をして待っている。金曜にはコピーの作業もしないようにしている。車もワックスをかけておいた。いつも彼女は半袖のブラウスを着て待っている。車の助手席についてから、長い髪を後ろで束ねる。車は静かに走りはじめる。環状線のトラックの間を縫うように走る。パチンコ店と、中古車センタばかりが多い沿線は、夜は静かだ。道路の上だけが、激しく蠢いている。大型車の、ゴウ、という唸り。トレーラーが、信じられない様な積み方で、乗用車を運んでいる。最後の客を運び終えたらしいタクシーが、ものすごいスピードで駆けていく。僕は、彼女に目配せしてから、タクシーを追う。二人の体がシートに押し付けられる。東京を大きく一回りしてから、湾岸を走り、朝の霧が出た頃、僕は彼女を部屋に送り届けた。  「寄っていく?」帰りかけた僕に、佐知子が聞いた。  「じゃあ、コーヒーでも淹れてくれるかな」     
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