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 僕が卒業したのは、北関東の田舎町の学校だ。町に中学校は一つしかない。卒業後は、ほとんどが地元の高校に進み、そのまま地元に就職するか家業を継ぐことになる。学業成績にこだわるような家庭もまれで、のんびりしたものだった。  チビ六の家は、小さな電器屋をしている。ここは今でこそ大規模な工業地帯になっているが、昭和四十年代まで電気が来なかったような町だ。それまで彼の家が何をしていたのかは分からない。電気が来る前の街灯にはランプが使われていた、夕方になると、その一つ一つに灯を入れて歩くのだ。噂では、彼の父はその仕事をしていたということになっていた。疑わしいものだが、息子同様に小柄で控えめな姿を見ると、そんな気もしてくる。とにかくチビ六には家業があり、きっとそれを継ぐことになるのだろうと、僕は漠然と思っていた。  「親父の店、潰れちゃってさ」  チビ六は、ちょっと寂しそうに言った。  「おかげで、俺も東京に出られたんだけど」  東京で生活をしているのは、僕の他には学校に通っている数人と、チビ六くらいだ。彼には、それがちょっと誇らしいらしい。胸を反らして笑って見せた。     
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