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 翌朝、見てみると十ばかりのパスワードが見つかっていた。それでも十分だ。チビ六との約束では、一つにつき一万円になる。早速、チビ六にメールで送信する。慣れた手つきでメールを受信するチビ六の姿は想像できなかったが、人間必要なことはすぐに憶えるものだ。僕も、彼もいろいろあったのだ。  二日後、約束通りの金額が、小為替で送られてきた。振り込みや書留は、いざというときのために使わないらしい。少額の小為替が何枚も入っている。  僕はそれを数えながら、妙に得意な気分がしていた。単なる試行錯誤で見つけたパスワードだ。単純労働だった。でも僕は、いっぱしのクラッカーになったような気分だった。チビ六はやはり僕の助けが必要だったのだ、と思えた。僕は毎晩プログラムを走らせ、百を越えるパスワードを見つけ出した。  チビ六は、新しい仕事も持ってくるようになった。市販ソフトウエアの不正コピーだ。これは至極簡単な作業だ。ちょっとした知識と、準備資金があればよい。市販されているソフトウエアを一セットだけ買ってきて、コピーしてやる。数万円から数十万円するものを、千円もかけずに複製してしまう。  これをチビ六は他の組織に流し、そこはまた外国人組織に流す。最終的には外国人組織の末端の者が、街頭で手売りすることになる。この仕事は数がこなせるので、結構、儲かった。一枚二千円で、一日に百枚はこなせる。真夏日が続くようになった頃、僕は自分でも持て余すほどの金を手にしていた。
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