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 机の上の電話が鳴る。チビ六ではない。彼は一度も電話をしてこない。メールと郵便ですべてのやり取りが行われる。  「わたし、誰だかわかる? 望月佐知子よ」  中学の同級だった彼女は、東京の女子大に来ている。昔は目立たない女の子だったのだが、先日の同窓会では思いもかけないほどに綺麗になっていた。東京に出てきたから綺麗になったのか、もともとそうした素質があったのかは良く分からない。  「この間の同窓会では、何も話せなかったから。会える?」  僕にとっては、願ってもないことだ。ここしばらくはパスワード探しや不正コピーに夢中でいたが、やはり女の子と話すのは魅力的だった。僕は、車のキーを掴むと、彼女の元に向かった。     
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