18歳

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 子供の頃から通い慣れた小道は、月が細い夜でも迷わない。誰も住まなくなった廃屋をぐるりと回り込んで、広葉樹のトンネルを抜けた先。  唐突に開けた視界一面に広がる、遠浅のなだらかな砂浜。さらにその向こうには、仄かな碧に揺れる夕刻の海。頭上を仰げば薄紫の空に早くも一番星が在って、そこから水平線を染める琥珀に向かって階調が滲んでいく。  オレが腰に差しているのは、木製のブーメラン。高卒で就職した地元の工務店の社長が、オーストラリア土産にくれた。観光客向けの土産のせいか手元には戻って来ないけれど、練習の甲斐あって大体狙った場所に落とせるようになってきた。  右手に握って重みを確かめると、おもむろに本日の一投目。うん、悪くない。その軌跡を追って一直線に駆け出した白い毛足の相棒。
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