18歳

1/6
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ

18歳

 サンダルを引っ掛けたオレが庭に出ると、相棒が濡れた鼻先を擦り寄せてくる。大きな口に咥えられたリードを受け取って首輪に繋ぎ、勝手口から畦道へ。  裏の田圃に水が張られて、今年もカエル達が夕暮れの背景音楽を奏でる。サンダルの裏に、自由奔放な雑草の感触。  古ぼけた駄菓子屋の前を通り掛かる。  店先には、年季の入った冷凍ケース。その扉をカラリと開いて、取り出したるはスイカアイス。パリッと袋を破ると、赤と緑のツートン二等辺三角形が姿を現した。赤い果肉には、スイカの種を模した黒いチョコチップが埋まっている。  ポケットを探って小銭を何枚かつまみ出し、冷凍ケースの上に置かれた空き缶にチャリリと落とす。店内を覗くと、駄菓子屋のバァちゃんの小さな背中が見えた。テレビの相撲中継に見入っていて、こちらに気付く様子はない。  リードを持つ手が、不意に伸びる。ピンと張ったその先で、こちらをチラと振り返る相棒。フッと短く鼻息を漏らして、散歩の続きを催促している。 「わかったよ。そんなに急かすなって」
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!