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「昔は王城に召し抱えられて、権力者の元、軍に所属していたこともあったけど、今は……こんな力があっても、魔女と呼ばれて火あぶりにされるのが関の山」
「エデン……」
「……私はあの村の子供の怪我を治したんだ。親は感謝してくれたけれど、それ以外の人たちは私を魔女だって言った。それどころか、魔女の恩恵を受けたものとして、私が助けた子供も、その親も……」
言葉が全て終わる前に、その口を塞ぐようにガイアはエデンを胸に抱き寄せた。
強く自分の胸に押し当てて、もうそれ以上話さなくていいと言葉を封じる。
「お前が悪いわけじゃない。それは、お前は悪くない」
神を信じる善良な人々が自分たちを守るための術だったものが、やがて歪んだ知識と悪しき迷信となって蔓延っている。
妄信的にそれを信じる者たちが暴徒となり戦も繰り返されてきた。
今やエデンや憐れな親子にふりかかった様な悲劇は、どこでも見られる景色となってしまった。
「その親子は可哀相だが、お前も十分に傷つけられたんだ。お前が背負う罪ではない。忘れるんだ」
何をしてやることもできない。
「忘れることは悪い事じゃない。生きて行くために必要なことだ。無用な罪を背負っても誰も報われない。道を間違わない事だけ信じて、忘れて、生きろ」
ガイアの言葉に応えるように、エデンはぎゅうっとしがみ付いてくる。
もしかしたら泣いているのかもしれないが、ガイアはそれは見ないふりをして、そのまま胸に抱きしめ続けていた。
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