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ガイアは火の砦と呼ばれる国境砦で警備兵をしている。
火の砦は火山の直ぐそばにあり、隣国からこの砦を目指して国境を越えるには、毒のガスが湧く火山を抜けねばならない難所だ。それ故、この砦に攻め入るようなものはほとんどないが、火山のすそ野には地熱を利用した産業が栄え、国にとっては重要な街の一つでもあった。
火の砦には常に10名ほどの国境兵がいるが、他所の砦で諍いがあれば応援に出ることも少なくない。
ガイアがエデンを助けた時もそんな他の砦への応援に行った帰りの事だった。
「またデカいのを拾ってきたな」
馬から降りたエデンを見るなり、門当番だった同僚のキルカが言った。
「デカい?」
どう見ても、エデンは大男のキルカの半分くらいしかない。
「前の前に出陣した時は羽根を痛めた鳩、この前に出陣した時は猫だったか? 今度は子供かよ。デカいだろ」
「ああ、そう言う……」
意識していなかったが、ガイアはそう言う性分なのかもしれない。確かに鳩だの猫だのを砦に連れ帰って来ていた。
「で、どうするんだ? こんなデカいの、隠して飼うには隠しきれんぞ?」
そう言ってニヤニヤと笑うキルカの腹を剣の柄でどんっと突くと、ガイアはエデンを庇うようにして前に立って行った。
「俺の従者に失礼な事を言うな」
「従者って……こんなチビが?」
砦に住む上級兵は身の回りの世話をするものを同伴することを許されている。
大抵は妻や家族であることが多いが、医療の心得のあるものなどを個人的に雇う者も少なくない。
ガイアはこの砦では若くして上級兵になった腕利きだ。
その為に良く応援にも呼ばれ、この砦に居ることの方が珍しかったが、もちろん上級兵なので従者を置く資格は十分にある。
「いや、人の趣味はとやかく言いたくないが、こんな子供を囲うのはどうかと思うぞ、俺は」
「キルカ、下世話な想像をしないでくれ。エデンはこう見えても手先が器用で役に立つんだ」
ガイアがそう言うと、ぎゅっとエデンにマントの端を掴んで後ろにいたエデンが初めて口を開いた。
「私は薬師だ。薬草園を見せてくれれば薬が作れる」
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