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「エデン?」
それはガイアにとって初耳だった。
しかし、エデンは自信満々に言ってのける。
「薬以外に毒も作れる。昔いた場所では狩用の矢じりに塗る麻酔薬なんかを作ってた。ここでも役に立つだろう?」
「そりゃ頼もしい。ここは地熱で珍しい薬草も多いが大丈夫か?」
「ずっと旅をしてたから、暑い土地のものもわかる」
移動中に旅をしていたのは聞いていたが、そんなことをしていたとは。
キルカと別れ、ガイアの個室に戻ると、エデンは慣れた手つきでガイアの装備を受け取り壁に掛けて行く。
武器や装備を壁に掛けるのは、すぐに身に着けて出陣できるようにするためで、敵襲の多い砦ならではの作法だ。王城や街に居る兵士たちはやらない。
「お前は以前どこかの砦に居たことがあるのか?」
「……昔ね」
子供らしからぬ言葉と仕草。
エデンは自分の事はあまり語らないが、物を良く知っている。
砦まで来るまでの間にもその博識さに驚かされることが幾度もあった。
それで、ガイアはキルカに言われて咄嗟に従者だと偽ったのだが、これならば従者として十分に役立つかもしれない。
「さっきは咄嗟にお前を従者にすると言ってしまったが、それでもいいか?」
「……今更だね。だけど、私は往くあてもないし、従者に雇ってもらえるなら有難い」
エデンは最後にガイアからマントを受け取ると、自分の背丈ほどもある大きなマントをこれも慣れた手つきで綺麗に畳んだ。
「さっきも言ったけど、私は薬師もできる。こう見えてもそれなりに知識もある。砦に置いてもらえれば役に立つこともあると思うよ」
「誰かに従事していたことがあるのか?」
「……長く旅をしてる間に覚えただけだよ」
そう言うエデンの瞳に影が差す。
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