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「その、話したくなければ、話さなくてもいいが」
「……別に、他の人に言いふらさなければ、ガイアだけが知っているだけなら問題ない」
そう言うと、エデンは捌いたうさぎに虫除けの布をかけてから、ガイアの方へと向き直った。
「私の力は時間を操るっていうのは言ったよね? 私は私の望む任意の時間を召喚することができる。この間の怪我は、私が怪我をした私の足に、怪我をする前の時間を持ってきたわけで、傷を治したわけじゃない」
「時間を戻して、傷をなかったことにした?」
「近いけど、厳密には違う。時間というのはもっとすごく大きな流れで、それを自由にすることはできない。私にできるのは、私が望んだ時間を今ここに召喚することだけ。流れは変えられない。だから、私たちは時間召喚士と呼ばれている」
「私たち? 他にもいるのか?」
「……気になるのはそこ?」
クスクスと愉快そうに笑われるが、ガイアには何故笑われたのかわからない。
「調べたわけじゃないけど、時間召喚士になるのは血によるところが大きいんだと思う。私の一族には何人かこの術を使える人間が生まれているけど、他の一族に時間召喚士が居たという記録はないんだ」
「親から受け継ぐようなものなのか?」
「そうだね。少なくとも修行したくらいで身につくものではないかな」
それは息をするように自然に、エデンたち時間召喚士は時間を操る。
「今はエデンのほかにもその……時間召喚士は居るのか?」
「生きていれば、私の弟もそうだ」
「……そうか」
生きていれば。
その言葉が酷く重く聞こえて、ガイアは頷くことしかできなかった。
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