傷痕と爪痕

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ドアを開けて、俺が立っているのを見ると 「うわっ!  なんだ、ハル、帰ってたのか?  声かけてくれれば良かったのに。」 そう言って、手にしていた紙を渡してきた。 それは、さっき海で撮った写真。 睨み付けるように、真っ直ぐ前を見る俺が、写っていた。 俺、こんな顔してたんだ…。 いつもとは違って、大人びて見えた。 「良い瞳だよな。」 俺の頭をポンと撫でて、歩き出す。 「その写真さ、仕事で使ってもいいかな?  まあ、話が通ればなんだけどな。  顔が全部出ることはしないよ。  ハルだって、判んないようにする。  ダメか?」
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