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第1章 理不尽との闘い
これから話すのは、まだ、自分が<霊媒体質>だと自覚する前の出来事である。
自分は、五~六歳の頃、都内の線路沿いにあるマンションに住んでいた。
そのマンションで夜寝ると、ほぼ毎回、金縛りにあう。
また、金縛りになると、必ず、<へんなもの>が視えるため、幼い自分は怖くて仕方がなかった。
また、どんなものが視えるかというと、
仰向けで動けない自分の顔を分厚い眼鏡をかけた学生服の男性がのぞき込んできたり、
透明のモヤモヤが何処からともなくやってきて、自分の身体に入り(入られるとものすごく気持ち悪い)、完全には入りきれず出てくる、を繰り返すなどなど。
いわゆる幽霊というヤツだ。
だいたいは、目をぎゅっと閉じて我慢していれば、緊張と恐怖で疲れ、いずれ寝て(もしくは気絶)しまい、朝になる。
ただ困るのが、朝起きると全身の力が入らず、だいたい五分間くらいは身体をまったく起こせないことだ。
<へんなもの>が視えるのは怖いし、朝身体が動かないのも辛いし、困り果てた自分は、親に相談をした。
しかし、幼い自分の訴えは、夢だと不当に決めつけられ、無下にされたのだ。これは許す訳にはいかない。
怒りに煮えくり返った幼子は、夢じゃないと力説した。親は、怖がりの子供が親と一緒に寝たがっているのねハイハイと馬鹿にした。
意固地になった幼子は、これまでに遭遇した金縛りの内容を事細かに説明した。親は、「怖いから嘘つくな! 」と逆ギレした。
まことに遺憾である。
しかし、小学三年生の頃、マンションから一軒家に引越しすることとなった。
引越先では、とたんに、金縛りにあう回数が激減。金縛りにあったとしても年に数回程度だった。
しばらくすると、マンションでの金縛りの出来事は、親が言うよう夢か幻だったかと思うようになり、そのまま月日は流れ、幽霊などの存在をまったく信じない人間に成長した。
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