0人が本棚に入れています
本棚に追加
第2章 幽霊の存在証明
二十歳になった時、S県にある学生寮で暮らし始めた。
その寮は、最寄り駅から線路沿い徒歩十分くらいの場所にあり、線路沿いの道は死亡事故が多いらしく、「死亡事故多発注意!!」の看板が置いてあった。
寮生に学業に励んでもらう気づかいのない立地だと思った。
当時、学生社員として居酒屋で働いていた自分は、終電まで銭稼ぎにいそしんだ。
仕事終わり、寮に帰宅する際、深夜の暗がりの中、『死亡』看板付近を通るのが本当に嫌だった。
ただでさえ、深夜であまり人気もなく薄気味悪い暗い夜道で、『死亡』の文字が書かれた看板を見せつけられたら、枯れ葉が舞い落ちてもびびる自信がある。
また、びびってるせいか、誰もいないのに背後に人の気配がして、更にびびる。
更にびびったせいか、背筋が寒くなり、鳥肌がたつので、これでもかとびびる。
びひる自分は、毎回こう言い聞かせた。
「この世に幽霊なんかいない! いないんだから怖くない! 後は車に轢かれなければ大丈夫!」
と、頭の中で繰り返しながら、帰宅していた。
今思うと、この言葉を鼻で笑うために、<彼女>は現れたのだろうか。
最初のコメントを投稿しよう!