1. 幻想に憑りつかれる夜

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痛いほど見開いた目に映るのは超至近距離の秀麗な顔立ち。 長い睫毛の一本一本まで子細に見えてしまい、あぁやっぱり髪と同じで金色なんだと半ば呆然としながら考えて、そうじゃないだろと思い直す。 口許にあたるあたたかな吐息。 それよりも高い熱を帯びた、やわらかくてほんのり湿った感触が唇を覆う。 考えることを忘れた頭が見事なまでのフリーズを決め込み、けれどこれが何であるかはすぐに告げられる。 目の前の、悪魔に。 「は…何その顔。ひなたちゃんはキス初めて?」 「っキ……」 「お、図星?いいな、そういうの…」 熱い吐息を零しながら離れた唇がゆっくりと弧を描き、薄く開いた隙間から赤く艶めく舌が覗く。 獲物を見つけた肉食獣さながらに舌なめずりをする一部始終を目で追ってしまい、微かに響く水音と濡れた唇に艶麗さが一層増して。 ビクリと、知らず身体が震えた。 「いい反応…すっげぇそそられる」 「っ…や、やだ!来るなバカっ…」 「ふは、心配しなくても…」 なんて質の悪い。 怯える俺を力で押さえつけて、わざわざ。 耳元で、身体の奥の何かを湧き立たせるように、低く、甘やかに掠れる声色で。 「ちゃんと息の仕方から教えてやるよ…」 最後にリップ音を響かせてまで色気をたっぷりと含ませて、囁かれる。 ゾクンっと耳から足先まで甘い痺れが走り、力が抜けた瞬間を狙いすましたかのように。 今度は優しく、ゆっくりと唇を塞がれた。  
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