16. いつの日かきっと無くなりますように

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辛いなら辛いって言え、なんて。 それができたならどれだけ楽か。 分かってない分かってない分かってない。 「お、前に、何が分かんだよ…!俺と違って何でもしてもらえて『普通』に生活できるお前に、何が…!!」 久しぶりに出した声はガラガラにしゃがれて最早声にもなっていない。 でもそんなこと気にもせず、言いたいことを散々ぶちまけた。 今まで溜まっていたものを全部吐き出すように、怒りの全てを奏にぶつけるように、煽られて沸々と湧き立つものの全てを、俺にのしかかる相手に撒き散らした。 「言ってどうにかなるんならとっくにしてるんだよ!自分でどうにかできるなら、俺だってしたい…!全部与えてもらえるお前には、一生分からない…!!」 「分かる訳ないだろ…!言われなくても全部分かってあげられるほど天才的な頭脳も能力もねぇんだよ!言ってくれなきゃ察することも分かることもないんだって、いい加減気づけよ…!」 「っうるさいうるさいうるさい…!言ったところでお前がどうにかしてくれるのかよ…!俺がどうにもできないことを、お前が代わりに請け負ってくれるとでも?!言いたくないことも口にして認めたくないこともあるんだよ…!」 そうだよ。認めたくないんだ。言いたくないんだ。 こんな惨めな、願い事。 「俺だって…俺、も……普通に、生きたい……っ」 「――っは……なんだよ…言えるじゃん、ほら…泣くな。言ってくれれば辛いとき傍にいてあげることも、労わってあげることもできるから。こんな俺でも、泣いてるのを隠す手伝いくらい、できるから」 強引なやり方して悪かったって呟く奏の手は、冷たくて。 それは零れていく俺の涙でどんどん、熱を増していった。  
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