16. いつの日かきっと無くなりますように

12/13
前へ
/209ページ
次へ
ずりゅずりゅになった俺の鼻にティッシュを当てて、「はいチーン」なんて奏が言う頃にはもう、俺の中で湧き立っていたものも鎮まっていた。 奏がくれたお気に入りのウサギのぬいぐるみを抱き寄せて、今更ながらの恥ずかしさを誤魔化すように埋めた顔をぎゅ、と両手で挟まれる。 「日向。これからは、辛いときはちゃんと言って。頼むから」 「う、りゅ……」 「俺は神様じゃなければ超能力者でもない、普通の人間で、頼りないかもしれないけどさ。どんなに微力でも日向の力になりたい。日向が辛い思いしてるのに、何もできないのはもう嫌だ」 「か、なで……奏…ごめん…ごめん、なさい…」 「あぁもう、泣くなってば」 いっぱいいっぱいしてもらってたのに、こんな風にされなけば俺は「辛い」とすら言えない、情けないやつでごめんなさい。 迷惑ばっかりかけて、その癖何も返すことができなくて、甘えるばっかりで。 ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。 「俺、何もできなくて……奏に頼ってばっかで、ごめん、なさい……」 「…いーよ。いっぱい頼って、甘えて。今更だろ」 「でも、何も返せなくて、俺…ほんとに、ダメな奴で…」 「違うだろ、日向。日向は『良いやつ』、だろ」 「っん……ごめ…」 「謝るな、バカ」 奏の言葉が心に痛かった。 本当に、もっと早く言えれば良かったのに。 ただ人にぶつけるという行為だったけれど、たったそれだけで、聞いてくれる相手がいるというだけで、心に溜まり続けていた嫌なモヤモヤの全部がスゥっと消えていくような気がした。  
/209ページ

最初のコメントを投稿しよう!

532人が本棚に入れています
本棚に追加