17. ただそれだけで

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カチ、コチ、カチ、コチ… 思い出の箱の中身を曝け出し、冷めたココアを一気飲みする頃にはもうすっかり夜は更けて、時計のリズムがしめやかに響いた。 「……奏との約束もあって、それからはホントにべったりだった。元々奏に依存してたけど、もっと酷くなった、ていうか……奏の、全部話せる相手の傍にいると安心できた」 「…それで、奏もひなたちゃんが望むだけ傍にいてくれたと」 「うん…。一度として、離れろって言わなくて。俺が寂しいって言えばじゃあ一緒にいるって、学校もサボったりして……申し訳ないって思ってても、何を差し置いても俺を優先してくれるのが嬉しくて」 奏は。俺の傍に、ずっと居てくれて、いつだって俺のことを考えてくれて、家族として迎えてくれて…… 挙げ始めたらキリがないほどにたくさんのことを、全部、俺の為に。 「友達よりもずっと濃い親友で、家族…みたいに、ずっと…」 「…ひなたちゃん」 「奏、は……俺の、為に。俺の、ことだけ…でも、それは…」 「ひなたちゃん……いいよ。気付かないフリしてて。何も知らないフリしてて、いいよ。俺が許すから」 そう言って俺の頭をそっと撫でてくれる朔夜は、俺を甘やかしてくれる。 知らないフリ…なんて。 したかった。気付きたくなかった。 どうして俺はこんなにも鈍感なんだろうって、そんなことすら、思いたくなかった。 「どう、しよ……俺…多分また……」 俺は、多分、また。 奏を、傷付けることになる。  
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