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カチ、コチ、カチ、コチ…
思い出の箱の中身を曝け出し、冷めたココアを一気飲みする頃にはもうすっかり夜は更けて、時計のリズムがしめやかに響いた。
「……奏との約束もあって、それからはホントにべったりだった。元々奏に依存してたけど、もっと酷くなった、ていうか……奏の、全部話せる相手の傍にいると安心できた」
「…それで、奏もひなたちゃんが望むだけ傍にいてくれたと」
「うん…。一度として、離れろって言わなくて。俺が寂しいって言えばじゃあ一緒にいるって、学校もサボったりして……申し訳ないって思ってても、何を差し置いても俺を優先してくれるのが嬉しくて」
奏は。俺の傍に、ずっと居てくれて、いつだって俺のことを考えてくれて、家族として迎えてくれて……
挙げ始めたらキリがないほどにたくさんのことを、全部、俺の為に。
「友達よりもずっと濃い親友で、家族…みたいに、ずっと…」
「…ひなたちゃん」
「奏、は……俺の、為に。俺の、ことだけ…でも、それは…」
「ひなたちゃん……いいよ。気付かないフリしてて。何も知らないフリしてて、いいよ。俺が許すから」
そう言って俺の頭をそっと撫でてくれる朔夜は、俺を甘やかしてくれる。
知らないフリ…なんて。
したかった。気付きたくなかった。
どうして俺はこんなにも鈍感なんだろうって、そんなことすら、思いたくなかった。
「どう、しよ……俺…多分また……」
俺は、多分、また。
奏を、傷付けることになる。
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