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――……
頭が、重い。
きっと昨日泣き過ぎたせいだろう。
どうあっても奏を傷付けることに気付いてしまって、取り乱して泣きじゃくる俺に朔夜は一晩中あやしてくれていた。
泣いている内に寝入ってしまったせいで、涙が渇いて上下くっついてしまった瞼が痛い。
チクチクしたその痛みを堪えて目を開ければ、もちろん腫れぼったい感じがして。
朝から気分がどんよりと重くなる。
考えなければいけないけれど考えたくないことが、たくさんあった。
「さくや……朔夜…」
「ん……んー…おはよ……あー、目冷やさないとだな。ちょっと待ってて」
「やだ……」
「ひなたちゃん?」
何も考えたくない。
本当にこのまま、何にも知らないフリを…何も気付かなかった昨日までの自分のフリをしてしまおうか。
そんなのできないって分かってるけど、今だけは。
せめてこのベッドのぬくもりに触れている今だけは、甘えていたい。
布団を剥いで出て行こうとする朔夜の引き締まった腰に腕を回し、猫のように背中に擦り寄れば微かな笑い声と共に髪を梳いてくれる。
もう少し、もう少しだけ。
無条件の優しさに浸ったらちゃんと、向き合うから。
今だけは甘い時間の中で全部、忘れさせて。
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