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脇道を一本入った先に見つけた小さな公園のベンチに座って一息吐く。
吐いた息は白く溶け、目に見える寒さを誤魔化すようにコンビニの袋を漁ってあたたかいお茶とフランクフルトを取り出す。
辛いのは苦手だから、マスタードを出さないよう気を付けながらケチャップだけをたっぷりとかけて大きく口に放り込もうとする、と。
「おにーさん、俺にも分けてよ。それ」
「んあ?」
音も立てず背後に迫っていた見知らぬ男に大きくガブリと持っていかれた。
「っおま…何す…」
振り向いた瞬間、本気で息が止まった。
意地悪く弧を描いた薄い唇に付いたケチャップをぺろりと、赤い舌を覗かせながら舐め取るその男の容姿があまりに綺麗で、色っぽくて。
正直世間で騒がれているどの俳優より整った顔立ち。
ダサいビン底眼鏡をかけているはずなのに、その下から覗く蒼と金の瞳と、軽くまとめられた茶とも金ともつかない髪はその変わった容姿を際立たせ端正さに磨きをかけている。
座った俺に合わせて屈んでいてなお高い背丈は恐らく190近いのではないだろうか。
どう見ても日本人離れしていて、どこかの映画から抜け出たと言われても納得できてしまう。
「んー?なぁに、一目惚れでもした?」
「ばっ…違う!!」
見蕩れたのは事実だけど、断じて一目惚れではない。
けれど男が男に一目惚れなんておかしいと、そう思わなかったのなぜなのか。考えもしなかった。
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