線香花火とキス

8/13

65人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
「あそこ行こう」 須坂さんが指さしたのは会社近くにある公園。 「…公園?」 須坂さんのイメージからはかけ離れていて不思議に思う。 「俺だって公園くらい行くから」 普段笑わない須坂さんがふっと笑う。 その笑みにあたしの心は奪われるんだ。 「これ、やりたいんだ」 須坂さんがカバンから出したのは二本の線香花火。 「線香花火…?」 「また柄にもなくとか思ってんだろ?」 その通りすぎて思わず頷いてしまう。 「素直だな」 〝そういうとこがいんだけど〟 とそっとあたしのおでこにキスを落とす。 「す、ざかさん…」 「お前さ、アイツのこと好きなの?」 「え?」 あたしが好きなのは目の前にいる貴方であって。 ほかの誰でもないことを気づいてはくれないのだろうか。 「塚田のこと」 「元太のことは何とも…」 「ふーん。あいつは違うよな」 「…たぶん」 そんなのいくらあたしだって気づいてる。 なのに、どうしてあたしの気持ちに気づいてくれないのだろうか。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

65人が本棚に入れています
本棚に追加