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「日向おせーよ」
家のドアを開けると中から足音と怒っているような声。
「え?」
この声に聞き覚えがあった。
でも、そんなはずはない。
だって、さっき自分の家にいたもの。
「は?」
玄関までたどり着いたその足の持ち主は、顔をゆがめた。
「日向なんで、お前が里利子といんだよ」
あたしと“日向さん”という彼の手を引き離す。
「え?え?」
目の前の彼は、あたしがずっと付き合ってきた彼そのもので。
「どうした?日向に何かされた?」
付き合っているときの優しい瞳であたしを覗き込む。
「マサが浮気を…」
「は?なんか悪い夢でも見たのか?」
「だって、マサの家にいったら女の子といて…だから、もう行くあてがなくて地下鉄で揺られようと思ったら日向さん?に出あって…」
あたしの言葉にどんどんマサの顔がゆがんでいく。
「やられた」
そうしゃがみこんだ。
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