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LOVE STREAMS
あの日、
僕たち家族は日本に旅行に来ていた。
名前は忘れてしまったけど、
僕たちの故郷によく似た川と海に寄り添う街だった。
「プレゼントだよ。開けてごらん」
名前の知らない川を海に向かって下っていく水上バスのデッキで、
僕は父からもらった箱を揺れながら開けてみると、
ハリボテの魚が顔を覗いた。
スチールのウロコがひんやり冷たかった。
「ダディ。何これ?」
「トイフィッシュだよ、ボーイ。この国のマシンは精巧だから本物の魚みたいにどんな水中でもずっと泳ぎ続けるらしいんだ。早速試してみようじゃないか」
「いま?ここで?」
「そうだよ。いまこの川に投げ入れるんだ」
投げた後にどうやってこのおもちゃを回収すればいいんだろうとか考えてる僕をよそ目にダディはトイフィッシュの電源を入れた。
安っぽいモーター音がギリギリと鳴った。
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